2021/06/04 金曜日
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中国の Didi(滴滴出行)、 東南アジアの Grab や Gojek(Tokopedia と合併してGoTo になりました)らは、配車アプリから始まり、 決済、フードデリバリ、 エンタメなどサービスの バリエーションを拡大して きました。
今週を締めるにあたり、 スーパーアプリの動向を振り返ってみたいと思います。
スーパーアプリという名前が出てきたのはここ数年ですが、獲得した顧客の LTV(Lifetime Value)を最大化するという観点から、同様の考えは以前からありました。 BRIDGE で7年くらい前から取り上げた韓国の Yello(옐로)は、ゲーム以外でユーザの可処分時間をどれだけ多く占有できるかを目標に、さまざまなスタートアップを買収してきました。
Yello は、「 CAC(ユーザ獲得コスト)が高いから」という理由で日本を敬遠し東南アジアに果敢に進出し時価総額約45億米ドルの ユニコーンに上り詰めましたが、ここへ来て経営陣の対立や税金滞納が明らかになり、空中分解しつつあります。 Yello にかつて買収された広告系の FSN(Future Stream Network)のチームがスピンオフするようです。
スーパーアプリを作り上げるのには、途方もないマーケティングコストがかかります。 昨年の Origami のメルペイへによる買収、LINE Pay と PayPay の統合などもそれに備えた布石と見れます。決済アプリは機能単体では利幅が薄く、お金というコモディティの極みのような媒体を扱う以上、他サービスとの連携、その集大成であるスーパーアプリを目指すのは自然な発想でしょう。
Grab、GoTo、Sea——東南アジアでスーパーアプリの覇権を握るのは誰か?【ゲスト寄稿】
時々、寄稿してくれる Goleden Gate Ventures の Vinnie Lauria 氏による投稿です。 東南アジアの三大スーパーアプリの長所・短所を比較し、どこが優勢でどこが劣勢なのかを、多分に Lauria 氏の主観は入ってるように思いますが、冷静に分析しているのが面白いです。筆者も東南アジアにいるときには、これらスーパーアプリのサービスを多用し日常の利便性が格段に向上しました。
一消費者として言わせてもらうと、どこか一強が生まれるよりも、複数社が互いに競争してくれる環境を望みたいと思います。 Uber が中国や東南アジアから撤退し市場をそれぞれ Didi や Grab に明け渡したときには、競合の不在でサービスがデグレードしたことを嘆く現地の人の話をよく耳にしました。ASEAN を一つの市場として捉えるなら、国境を超えて合併にモノ申すような、米 FCC 的存在があってもいいかもしれません。
フードデリバリ国内3位のmenu、KDDIから資金調達—— IDや決済連携で 相互送客と データマーケ視野に
フードデリバリアプリの menu が事実上 KDDI のグループ入りです。ソフトバンクの出資を受ける UberEats や Z HOLDINGS を通じて傘下にある出前館などとシェアを争うことになります。 日本では、通信キャリアやそれ系列のコングロマリットが、金融系サービスの提供を含んだスーパーアプリ化を目指す傾向にありますが、NTT は必ずしもこの レースに参加はしないようです。
コンシューマ向けアプリは、ASO(アプリストア最適化)よりも、スーパーアプリとの連携を念頭に考えた方がよいようになるでしょう。この分野で日本よりも少し先を走るのが ミニアプリまたはミニプログラム(小程序)の仕組みを持つ WeChat(微信)です。水平分離で影響力を薄めた通信キャリアは、日本ではスーパーアプリという新種の垂直統合モデルで影響力を取り戻せるのかもしれません。